ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第5回 『従業員を安易にエグゼンプト扱いすると罰則と損害が生じる』
残念ながら、日系企業に限らずどこの国から来た企業であれ、大半は正当性を説明できない筈。理由はFLSA法(Fair Labor Standards Act)に則っていないケースは明らかに企業側の方が多いからです。
重ねて言いますが、駐在員の方々の中には、従業員のポジションタイトル自体を全てマネジャー職に統一しておけば良いと前時代的に思い込んでおられる方が今も猶多く見られますし、そうでなくとも、残業した分の賃金を余分に支払ったり計算したりは確かに面倒で人件費も嵩み且つ余計な手間がかかります。従い、従業員全員を、就労時間(数)に影響されないエグゼンプト従業員にできたらどれほど楽だろう、と大半の経営者が思っていることでしょう。
しかしながら、上記した如く、これは就労に関するここ米国に古くから存在する真っ当な法律であり、米国内の企業全てが必ずや律すべき科条であり、人件費が増えようとも管理が面倒であろうとも遵守しなければその先にペナルティーと損害が待っています。
ペナルティーと損害とは言わずもがな、これまでに残業させた未払い分を遡って支払うのは当然のこと、それに時給分の1・5倍が課されたり、利子が加えられたり、時には罰金が科されもします。(現在のところ遡る年数に上限あり)
また例えば、従業員をレイオフする際などに於いて、企業はその従業員との間で権利放棄書を交わし、それに同意させる代わりに退職金をオファーするとの労使間の慣習があります。その権利放棄書で謳われるのは専ら「企業を何らかの差別を理由に訴えないこと」に尽きるのですが、そのあとには「放棄させることのできない権利」の一覧も記載され、それには「未払い賃金」が名を連ねています。
即ち、その当時はうまく言い逃れられたと思っても或いは知らずに行っていたとしても、未払い賃金あるいは未払い残業代が労使間に生じているのならば将来に亘り長く企業を苦しめることになり得ます。
従って、誰もがお分かりのように、エグゼンプション・ミスクラシフィケーション問題は、「うちの会社も間違っているかな?」「もしかすると拙いかな?」と思った時こそが解決に向けて動き出す時であることを重々理解してください。
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ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第4回 『働きぶりを間近で見られずより厳しい管理に』
前回=7月28日号掲載=では「従業員の自宅勤務がエグゼンプション・ミスクラシフィケーション問題をより顕在化させた」と題し、残業代の支払いが免除されるエグゼンプト従業員なのか、或いは残業代支払いが法によって義務付けされている時給払いのノンエグゼンプト従業員なのか、ここに至って雇用主側は明確且つ正しく分類せざるを得ない岐路に立たされていることを取り上げました。前回と重複する部分もありますが大事な内容ゆえ更に詳しく解説します。
とにかく、何故に顕在化したか? これまでその仕事ぶりをいつも見てきた上司達ですが、一転して部下達の働きぶりを間近で見られない状態になったことから自ずと、エグゼンプト従業員の部下に対してはゴール(目標)を達成したか否かをより厳しく測らざるを得なくなり、対するノンエグゼンプト従業員の部下に対しては時間の管理を厳しくせざるを得なくなる。
正しくはノンエグゼンプト従業員なのを意図したかどうかはさておいてもこれまで誤ってエグゼンプトに位置付けされてきた従業員達ですので、就労時間・就労スケジュールに関して急に上司達がうんぬんかんぬんと厳しく詰め寄り始めてきた場合、「おかしいですね、エグゼンプト従業員扱いしておきながら、なぜに就労時間を厳しく管理しようとしてくるのですか?」と反駁されざるを得ない。
では実際に起こり得る例として、雇用主側は、もし仮に、名目上はエグゼンプトに分類している自宅勤務の従業員に向けてすぐにとりかかって欲しい仕事を指示した際に、「お願いされたことは、まぁ今夜にでもやっておきます」とか「今から所用で外出するのですぐにはできません」とか「今週末まで待って下さい」などと言われたら、どう返すつもりなのか?
前々で触れましたように、従業員のFLSA(Fair Labor Standards Act)エグゼンプション基準テストには「当該職務は、通常、自由な裁量と独自の判断に基づいて仕事をする」とあります。加えて同テスト内には「ルーティンワークは仕事全体のうちの僅かな量である」と解釈できる項目もありますが、これらエグゼンプトの判断基準とされる内容と常々上司が下達する職務指示との間の乖離をどう説明するのか? あるいは部下達が合点のいく説明ができるのか?
以降は次回に続きます。
企業概況ニュース掲載 「人事・備忘録」 第二回 『Salary History Bans : 給与履歴照会制限法にまつわる話』
今号は、Salary History Bansおよびそれに関連する法律を取り上げます。
Salary History Bansは読んで字の如く「給与履歴を問うことを禁止」する法律であり、日本語意訳すれば「給与履歴照会制限法」となりますが、この法律について周囲から「実際の法律名は?」と聞かれることが多く、都度、「州や地方自治体が独自に定めたルールであり、従って法律名は各々の自治体で異なる」と伝えています。2016年にマサチューセッツ州で施行されて以来、米国中に急速に広がり、現在凡そ20の州および21の自治体で一般企業に対して同法を適用していますが、その動きが更に今後も広がっていくことは論を俟ちません*。
Salary History Bansの内容はいたってシンプルで、会社側がジョブオファーする際または雇用する前提条件として、求職者に対し、現在の給与額または給与履歴の提出を要求するか提出を義務付けること、を禁じるものです。
これを更に砕いて言うなら、募集時、求職者に対して、現在および過去の給与額は問うべからず、且つ、知り得た給与情報を基に採用・不採用の決定をするべからず、となります。では、このSalary History Bansが、なぜ全国に急速に広まってきているのかですが、これは、リーマンショックの余波がまだ続いていたことと相俟って、以前の仕事で収入が少なかった求職者は収入を多く得ていた求職者よりも低い給与額や少ない福利厚生を受け入れる可能性が高く、仮に企業側が求職者の給与履歴情報を入手した場合、自ずと低い給与額を提示するであろうことから、低所得だった求職者は以後も低賃金状態を解消できない状態が続くだろう為です。従って、給与履歴を問うことを禁止する目的は、労働者の格差を少なくし、労働者が転職したときに低賃金の永続化を終結させることにあります。
加えて、労働者の低賃金の永続性を絶ち切り、とりわけ男女間の給与格差の解消に努める行為は、平等賃金法、即ち1963年に生まれたThe Equal Pay Actを補強する目的にも通じます。同法は、先の幾つかの戦争に男性が駆り出され、空いてしまったジョブポジションを埋めるべく職場に女性が進出してきて以来、男女の給与格差をなくす目的から生まれましたが、この給与格差が現在でもなお依然として解消されていないことは雇用機会均等委員会などの諸機関が常に喚起しており、平等賃金法絡みの訴訟については他の差別訴訟と同じくらい日系企業は注意を払うべきでしょう。
ちなみにカリフォルニア州は、連邦法のThe Equal Pay Actに似た独自のFair Pay Actという法律を持ちますが、これまで同法は「同じ職務内容・同じスキルにて・同じ責任があるポジションの従業員間の賃金の不均等についてのみクレームを行う事が可能であった」のを、「同様(同類)の雇用条件の下、同様(同類)の職務内容であれば、給与格差についてのクレームができる」ように2016年に改定しました。更に、従業員(たち)からのクレームに対して雇用主は、年功序列システム・メトリックシステム等きちんと構築された給与制度の下で給与調整を行っており、性別によって給与調整を行っていないことを証明することが必要となりました。このような動きは何もカリフォルニア州だけに限らず全国的なものと捉えるべきであり、これまでの昇給方法が曖昧だった企業は、早期に給与制度を構築する必要に迫られています。
*注 各州各自治体が、給与履歴を問うことを禁止する法制化の動きにある中、ウィスコンシン州とミシガン州は、州政府が一般企業の採用プロセスに干渉すべきではないとし、州内自治体が給与履歴照会制限法を独自に採択することを禁止する法律を敢えて制定するなど、反対のアプローチを取っています。
ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第3回 『在宅勤務でエグゼンプトのメリット失せ問題浮上』
前回=6月26日号掲載=に続き、今回は「ミスクラシフィケーション問題がただいま浮上している自宅勤務継続問題とリンクし、如何に強く露呈するに至ったか」を取り上げます。
ミスクラシフィケーション問題は、何も今に始まった問題ではなく、前回のコラムでも取り上げましたが、20年前から連綿としかも全ての州で企業の大小を問わずに起きてきております。理由は言わずもがな、企業側が「残業代を計算するのが面倒だから」「残業代を支払いたくないから」に尽きるのですが、但し、この問題が露わになるのは、例えば、能力不足や不品行による警告書を発した時、解雇を告げた時など、決まって労使の関係が悪化した時です。
では何故に労使関係が良好な時には現れないのか─。それはエグゼンプトにカテゴライズされた従業員はノンエグゼンプト従業員のように時間に左右されないからです。ノンエグゼンプトにカテゴライズされた従業員については、企業は、残業代支払いから免れることが法律上できない為、自ずと就労に係る時間管理を厳しくせざるを得ません。一方のエグゼンプト従業員は、時間による給与支払いではなく能力による給与支払いゆえ、例えば、遅い出勤・長いランチ時間・早い退社…、延いては(職務上不要であれば)出社すらしなくて良いのです。従って、本来であればノンエグゼンプトにカテゴライズされるべき従業員が雇用主をしてエグゼンプトにカテゴライズされたとしても、従業員側にも時間管理の窮屈さから逃れ、就労中でも比較的自由に振る舞えるとのメリットが生まれるからです。残業をしたのに残業代が支払われない問題はあるとしても、日常ほとんど残業をしていないならばエグゼンプトの長所だけを享受できることにもなり得ます。このような企業の光景は米系日系問わず今尚常態化しており、小規模企業で家族的な人事管理を好む所長さんがおられる企業ならば猶更のことと捉えても良いかもしれません。
原因は、日本から出向して来られた親会社の駐在員がFLSA(Fair Labor Standard Act)─公正労働基準法と呼ばれる法律─を理解把握していない事から起こっており、且つ「全従業員をマネジャーの位にしておけば残業代支払いは不要」との日本的発想がそうさせている原因であることも明白です。
それが昨年のパンデミック発生により、何ら準備もできないまま従業員をして在宅勤務に移行せざるを得なくなった今日、上司はこれまでのように従業員の仕事ぶりを間近で見られなくなってしまい、職務遂行具合と相俟ってマイクロマネジメントがちで時間管理も厳しくせざるを得なくなるに至る。そうなれば当然乍らエグゼンプトとしてカテゴライズされた従業員─実際はノンエグゼンプト従業員であるべき─達は、エグゼンプトのメリットが失せてしまい、「では、間違っているクラシフィケーションを是正せよ」と迫るは必定ということになり、斯くして、良い関係であった時には労使双方がうまく利していたミスクラシフィケーションの問題が危うい形で露呈することになるわけです。
ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第2回 『不明瞭な従業員区分が企業に及ぼす恒久的インパクト』
前回=5月22日号掲載=に続き、今回もワーク・スケジュールとワークスタイルを取り上げます。
ワーク・スケジュールはワークスタイルと密接に関わっている、即ちこれ、「働き方」「働かせ方」問題であり、「働かせ方」の方法として前回では、1日8時間・週5日勤務から1日10時間・週4日勤務に変更するなど、とりあえず今の時期に普段と異なる就労勤務時間を設定することで「働き方」において自宅勤務を希望する従業員からも支持され易く、且つ転職を防ぐ手段ともなり得るAlternative work schedules(代替勤務スケジュール)やMake Up Time制(勤務時間補填制度)を取り上げました。
多くの企業の関心が集中する従業員の自宅勤務継続問題と、Alternative work schedulesやMake Up Time制のような手法の導入に絡み、人事管理上もっとも肝心且つ踏まえておくべきことはEmployee Exemption Status(従業員区分)です。これについてはここ米国でおよそ20年前から浮上してきており、通称「FLSA問題」とも言われています。
FLSAとはFair Labor Standards Actの略であり、所謂、公正労働基準法と呼ばれる法律ですが、これは1929年から始まった世界大恐慌をうけ、38年に、おびただしい数の失業者に職を提供するべく、●最低賃金を設定●残業手当の発生基準を設定●エグゼンプト/ノンエグゼンプトの区分を設定し、施行したとの経緯があります。つまり、企業が一人でも多くの者を雇用するよう最低賃金を設定することと合わせて1・5倍になる残業基準を設けつつ、その基準に該当する職務とそうでない職務を区分けしたわけです。単語の意味からもお分かりのように、エグゼンプト=残業代を免除される従業員、ノンエグゼンプト=残業代の対象となる従業員、です。
問題は、この区分けを謳ったFLSAの基準値が明瞭でなかった為、労使双方いずれ側もが都合の良いように解釈し得たことです。例えば「当該職務は、通常、自由な裁量と独自の判断に基づいて仕事をする」や「当該職務は、通常、重役や経営陣の手足となって働く」は、そうだともそうでないとも取れますし、また「従業員が特別なトレーニング、経験、知識を必要とするような特殊な、もしくは技術的な職務である」と問われれば、該当ポジションの価値を高めるべく当事者同士の労使双方が共に「そうだ、当該ポジションは特別な経験や知識が必要だ!」と敢えて声高に唱えてしまいがちですが、第三者から見るまでもなく冷静に顧みれば、区分けが間違っていることが多いのは周知の事実です。
このような背景ならびに企業側が残業代を支払いたくないとの経営上の永遠の理由から、実際は残業代が免除されないノンエグゼンプトなのに残業代が免除されるエグゼンプトに区分してしまうとのMisclassification問題が連綿と起こることになったのです。
ではこのMisclassification問題がただいま浮上している自宅勤務継続問題とリンクし、如何に強く露呈するに至ったかですが、これについては次号で取り上げたいと思います。
企業概況ニュース掲載 「人事・備忘録」 第一回 『Ban the Box(法)』
これまで当コラムでは、政府が計画する施策や動きを加味しつつ「米国人事労務管理 最前線」と銘打ち、来る将来の人事政策などを展望して来ました。今後は少し方向性を変え、実際に人事を担われる皆様に向けて、人事管理に主旨を置き、分かりやすく説明して参りたいと思います。
Ban the Box(法)とは
コラム一回目は、Ban the Box(法)を取り上げたいと思います。同法は、2001年の米国同時多発テロ以降、採用前の身元調査を行う雇用主が増えてきたところにリーマンショック後の高い失業率が重なり、とりわけ薬物に絡む犯罪歴がある大勢の者が、そこで露見する前科(Criminal record)のせいで仕事を見つけるのが困難な事態を打開するために生まれました。Ban the Box(法)はそれぞれの単語が示す通り、Box(質問欄)をBan(禁止)するとの意味であり、これは企業側が用意する雇用申請用紙に、以前ならば存在した犯罪(有罪)歴を問う欄を設けることを禁じる法律です。
FBI連邦捜査局の推定によれば、過去20年間で25億回以上の逮捕が行われており、FBIマスター犯罪データベースには実に7770万人の犯罪歴を有する者——米国内成人の実に3人に1人弱——が登録されています。これはゼロトレランス政策(行為の大小に関わらず厳罰を申し渡す条例)によるところも大きいのですが、対するEEOC(雇用機会均等委員会)側が出すガイドラインでは、逮捕の事実のみが、違法行為の証拠あるいは採用対象から除外する根拠には必ずしも値しないと明言。さらに求職者に有罪歴がある場合、雇用主はその行為の深刻度や罪を犯してからどれだけの時間が経っているか、求人中の職務内容との関連性(ならびに職務に与える影響度)を検証しなければならないとしています。但し、目的は仕事を見つけるのが困難な事態を打開することに尽きますが、Ban the Box(法)は各州および各自治体によって施行しているところもあればそうでないところもあります。今年1月時点では36の州と150を超える地方自治体が同法を施行したと報告されていますが、法律の呼称は同じでも、規制や条件がそれぞれ異なります。つまり、前述のように「雇用申請用紙上に犯罪(有罪)歴を問う質問欄を設けることを禁じる」とするところ、「ジョブオファーする前に犯罪歴チェックをしてはいけない」とするところ、「第一面接時に過去に有罪判決を受けたことがあるか? と問うことを禁止する」としているところ、など細かく紐解けばそれこそ千差万別といった感があります。但しニューヨーク市を筆頭に「条件付採用内定通知書(conditional job offer)を渡す前に犯罪歴を調査してはいけない」とするところが、やはり多いように思います。
オンライン採用面接の落とし穴
問題は、企業も以前だったら各州各自治体で同法が法制化されているかどうかを慎重に確認したのですが、最近はオンライン会議システムを用いて手軽に面接を行うことが日常となったため、見落とされるケースがあるようです。例えば、同法が施行されていない州内にある企業が、同法が施行されている州内の求職者の面接をします。そこでオファーを出し、同法が施行されていない州に呼び寄せるならまだしも、最近は、テレワーキングで職務遂行する条件で職をオファーする企業も多くなっており、即ち、同法が施行されている州に留まったまま自宅勤務を行う条件を提示するにもかかわらず犯罪歴を問うてしまったならば、不法行為になることもあるので、重々注意を払う必要があります。
このような致命的ともいえるミスを防ぐためにも、何をさしおいても雇用申請書から犯罪歴を問う項目・ボックスを削除しておくこと、求職者が雇用申請書や履歴書の提出時および面接時に——何次面接の段階であろうとも——犯罪歴やそれに類する質問をしないこと、を徹底しましょう。これは勿論、人事担当者のみならず、各部署にも徹底周知しておく必要があるのは言うまでもありません。尚、前述したように、Ban the Box(法)適用州であろうとも、職のオファーを出す時点で身上調査を行うことは可能ですので、企業は予め、募集から雇用に至るまでの採用手順を確立し、コロナ禍終息後の来る人手不足に備えておきましょう。
ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第1回 『代替勤務スケジュール導入には残業代に関する法律の確認を』
今回、その「HR人事マネジメント Q&A」の初回として取り上げるのは、多くの企業から常に問い合わせを頂き、その質問数も相当数に上る、ワーク・スケジュールあるいはワークスタイル…両者は密接に関わっていますが…これ即ち、働かせ方・働き方と言い換えても良く、そのうちのワーク・スケジュールについてを数回シリーズで取り上げます。
雇用主側からは、「コロナ禍で仕事が減ったので、従業員の就労時間を40時間から30時間または30時間未満としたい」「自宅勤務を許可したは良いが、託せる職務に限りがある」「仕事量が減ったので、そのポジションを廃止したいが、ポストコロナ禍では人手不足になることを見据えれば、解雇せずに就労時間数を減らすなどしてそのポジションを温存しておきたい」「従業員が出勤を嫌がるので、1日8時間・週5日勤務から1日10時間・週4日勤務に変更することも考えたい」との相談が寄せられる一方で、雇用主側が懸念する従業員側の想いには、「優秀な従業員が自宅勤務を機に遠方に引っ越したいと言ってくる」「自宅勤務と出勤の割合は今のままの6対4を維持すべきだと、これ以上の出勤を嫌がる」「出勤を無理強いすれば自宅勤務に慣れた従業員の中から転職を考える者も多く出てくるだろう」「自宅勤務を認めるのならば、Make Up Time制も柔軟に認めるべきだ」などが挙げられます。
これらのうち、「1日8時間・週5日勤務から1日10時間・週4日勤務への変更」を模索されるに当たり、先ず、このような異なる就労形態を設定することをAlternative work schedules(代替勤務スケジュール)と呼びますが、これは何も最近の流行りではなく、たとえば、1994年1月にカリフォルニア州ノースリッジで地震が発生し、ロサンゼルスダウンタウンへ向かう幹線フリーウェイが分断されて通勤が困難になった時なども、自宅勤務と共に、1日10時間・週4日勤務形態が推奨されたこともあります。
このAlternative work schedulesは、週休3日となるわけですから、仮に、大半の従業員が好み且つ適切な方法で導入されれば従業員をよりやる気にさせるカンフル剤ともなりますが、大半の州が連邦法に則って週40時間以上働いた場合に超過分に1.5倍の賃金を払うとしている中、少数の州では1日8時間(または10時間・12時間)を超えた場合でも1.5倍の賃金を払うなど独自の州法を備えていたり、ワーク・スケジュールの変更には対象従業員による投票を条件付けしている州もあったりと、すんなり変更できるわけではありません。従って、検討される前に、一先ず、御社が所在する州の残業代に関する法律を確認してみてください。
「新型コロナウイルス禍におけるアメリカの救済措置&失業保険」の記事の「休職制度」のパート
2021年5月|Lighthouse サンディエゴ 5月1日号|http://magazine.us-lighthouse.com/publication/?i=658682&ver=html5&p=24
「新型コロナウイルス禍におけるアメリカの救済措置&失業保険」の記事の「休職制度」のパート
2021年5月|Lighthouse ロサンゼルス 5月1日号|http://magazine.us-lighthouse.com/publication/?i=658440&ver=html5&p=34
ニューヨーク Biz! 掲載「マネジメントへの手紙」 マネジメント・コンサルタント/プロフェッショナル・コーチの視点から 第48回 『従業員のワクチン接種方針(2)』
前回=3月20日号掲載=に続き、オフィス再開プランの再検討に向けた米国内企業の実情をお伝えします。
前回は、EEOC(雇用機会均等委員会)が「接種の義務化は可能」との見解を出してはいるものの、コロナ・ワクチン接種を望まない従業員からの反発や訴訟リスク等を考慮すると、ビジネス上の明確な理由がないのであれば少なくとも現時点では任意レベルに留めておくのが無難であり、接種を推奨するのであれば奨励金制度など何かしらのインセンティブをつけることも考えられたら良いかもしれません。と寄稿しました。
これについて多くの問い合わせがあった為、今回も前回の記事を更に細かく解説したいと思いますが、先ず分けてお考え頂きたいのは、その従業員の職務が会社または工場や倉庫でしか遂行できない仕事なのか否かという点です。前者であれば、企業は大抵の場合、従業員にワクチン接種を要求する権利を元から有する為、特定の障害や宗教上の理由などの例外を除いて、ワクチン接種にインセンティブを提供する必要はないと考えますし、また、このような事態に一々インセンティブを提供すれば、これを当たり前と捉える風潮が強まる可能性もあることから、労務管理上、好ましい方向に進まないことも考えられます。対する後者の、従業員の職務が自宅から継続して行い得る場合、従業員がオフィスに来るよう要求されない限りはワクチン接種を推奨すること自体が不必要かもしれません。
次いで提供するインセンティブについて。上述した如く、出社を求めるビジネス上の明確な理由があるのであれば検討されて良いと言えますが、但しインセンティブとは言っても、それはあくまでもワクチン接種に費やす時間相当の2時間あるいはワクチン接種後の体調をも慮っての4時間これら1日以内の有給無給いずれかの短い休職時間を提供することを意味し、これら以外の何かを奨励したり報奨したりする必要はないということです。ワクチン接種とその後の体調の為にこれら以上の別種のインセンティブを出せば、それこそワクチン接種を断る従業員との一貫性の面で不公平感が生じる事にもなりかねないからです。
これに絡んでは、NY州ほか幾つかの州は、ワクチン接種する従業員に対して、無給(または有給)いずれかの休職を認めなければならない、というルールを策定し出してきています。
以上のことを合わせて考慮すれば、仮にコロナ・ワクチン接種を行う従業員に有給休職時間を提供する際は、既存の有給休暇や傷病休暇に数時間分を多く付与する方法ではなく、例えば、期限付き且つワクチン接種の証拠を提出することを条件にした、コロナ・ワクチン接種向けの新方針を設け、且つ、申請用紙の方も既存のものを流用せずに新たに作られるべきでしょう。
