企業概況ニュース 掲載 「人事・備忘録」 第九回 『焦点を当てるべきは社員達』

前回8月号の「人事・備忘録」では、採用市場が過熱している中で人材獲得競争に打ち勝つには、時に現金勝負が必要であるが、他社がますます魅力的なオファーを重ねることにいずれ追いつけなくなると考えるならば、雇用方針・職務環境・総報酬制度・ベネフィットなど自社の雇用政策に立ち返ること、即ち根幹を省みることに活路を見いだすべきとお伝えしました。もちろん見直されるべき雇用政策が、そこで働く上司・部下・同僚間の良好なる人間関係に立脚していることは言わずもがなです。

 ところで、今日の過熱した大量退職・人材獲得競争がそろそろ鈍化してきたとも考えられるのですが、理由は、ここ2年ほど活発だった退職や転職の動きが一段落し、人々が簡単に会社を辞めなくなってきたこと、とりわけコロナ禍を機に更に早めの「早期リタイア」を目指していた中高年代の動きが収まってきたとのニュースが巷に流れるようになってきたからです。

 こういった現象は、考えてみれば当たり前のことで、「コロナ禍で生活が一変した」や「外出禁止令が仕事を含むライフスタイルを見直す契機となった」とは誰しもが云うも、では「働かずとも暮らしていけるのか?」と自らに問えばそれが甘い考えだと即時わかるでしょうし、余程の資産家あるいは多くの貯蓄がない限りやはり人々は働かねば生活していけないからです。それに求人欄には羨ましいほどの高給オファーの募集がずらりと並び「転職すればそれが貰えるのか!」と一瞬唸るものの、それら高給はもちろん今以上に身を粉にして働くことが前提です。

 従ってこのような動きが戻ってきた今こそ、補充目的の人材採用活動に四苦八苦するより前に、現在働いてくれている従業員をケアすることに着目、いや着目は常にしているでしょうから、「更に」焦点を当てるべきでしょう。

 ただし、従業員のケアを主眼に置いて雇用方針・職務環境・総報酬制度・ベネフィットなど自社の雇用政策を省みるとは言っても、ではどこから手をつけようかと迷うのも必定。そこで、従業員達が今現在何を望んでいるか?何を会社に期待するのか?どうなりたいのか?を知るべく「従業員意識調査」や「人事監査」を実施すべきだと考えます。これらは自社内でも出来ますが、匿名性を確保し且つ客観的な目で分析するべく、折角ならば設問の段階から外部サービスに頼ることを強くお勧めします。

 さて、冒頭で「良好な人間関係に立脚した上での雇用政策の見直し」を謳いましたが、それは自社の従業員達が「うちは働き易くて素晴らしい職場だ。人間関係も申し分ない!」と内外に喧伝することこそが、良い人材が集まってくることに大きく作用するからであり、たとえ仕事が厳しくても、快適な職場且つ良い人間関係を築ける環境であることこそが、人材獲得の最大要素たり得るからです。これからホリデーシーズンに突入し、人材の流動性が一時的に落ち着くであろうこの時期に急ぎ行動に移し、迎える新年に備えるべきです。

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