企業概況ニュース 掲載 「人事・備忘録」 第十回 『退職・転職トレンドの終焉』

「人事・備忘録」10月号掲載記事では、大退職時代の終わりが見えてきた今こそ快適な職場および良い人間関係の構築または維持に努めるべきで、それこそが人材保持と新たな人材獲得の最大要素足り得ると説き、更にどこから手をつけるべきかのヒントを得るべく「従業員意識調査」や「人事監査」を行うことを勧めました。またそれには匿名性および客観的分析を要する観点から、外部サービスの手を借りるべきともお伝えしました。

ところで前記事寄稿から2か月経ち、大退職時代の終わりが見えてきたことへの客観的データやニュースが出揃い始めました。例えば、とある景気モデル予測にて今後12か月以内に米国が景気後退に陥る可能性が100%、同じく12か月間の内にリセッションが発生する確率は益々上昇しているとも出ました。あと幾つかの在米日系企業からは「少し前に転職して出ていった者が復職したいと願い出てきている」とも聞き及んでおります。

加えて、今年8月の求人件数が前月比で110万件も減少し、2000年3〜4月以来2番目の大きな落ち込みだったとのこと。実際に比較すると、7月の求人件数が1120万人、8月が1010万人で、1ヵ月で10%も激減、9月の求人件数は1070万件で8月より上向いたものの、これは毎年この時期に新卒者が就職することから上がることは予測されていましたし、9月以降も年末商戦に向けて求人件数はある程度増えることが予想されるものの、8月の落ち込みは来年に迫るリセッションに備えた為だとインタビューに応えた企業側が明かしています。今後も一段の金融引き締めがあることを鑑みれば、これまでの退職・転職トレンドの終焉はおろか、世の中が雇用引き締めに転じていくのは誰しもが予想するところであり、且つ新規採用において高めの給与額を提示する動きも早晩牽制されるようになってきています。

大手コンサルティング会社が毎年出す給与上昇率平均のうち、従業員数100名以下の企業に絞った場合、2021年が3.76%、2022年が4.42%、そして2023年の予想が4.46%と出ています。従業員数の多い企業規模になればなるほど上昇率平均値は低く出ていますが、この小中規模企業の方が大手企業よりも昇給率が全体的に高く出る事象は考えてみれば当たり前のことで、これは元の給与額が大手企業だと端から高いのに対し小中規模は低めの給与額ゆえ多めに上げざるを得なかったと分析できます。

但し2020年以降それほどに給与が上がって来ているかと言えば、信頼性の高い給与調査会社が出した給与上昇率では、職種にもよりますがほとんど上がっていないか、下がってすらいる職種もあるほどで、3.76% ⇨4.42% ⇨ 4.46% と年毎に安定的に上昇している数値はあくまでも昇給率「予算」の平均値であり、全員が全員上がっているわけではないことが窺えます。

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