企業概況ニュース 掲載 「人事・備忘録」 第十四回 『退職・転職トレンドの終焉 (続き4)』

前回の「人事・備忘録」6月号掲載記事では、昨年流行語となった「大退職時代」を懸念し、人員確保が先とばかりに現職および新規採用従業員の給料額をかなり底上げしたものの、最近は彼、彼女らの職務達成度合に失望し辞めて貰おうと考える雇用主が増え、それに伴い弊社に米国内日系企業から解雇に絡む相談が高い頻度で寄せられていることをお伝えしました。

即ち、昨今の傾向に合わせて給与額を上げるのはやむを得ないとしても、その給与額に見合った職務遂行能力を得られていないと感じる雇用主が多いということであり、また転職して前職以上の給与を得ようとする者には以前の働きぶりのまま高給を得ようとする者もいるため、それなりの職務遂行能力を期待する新たな雇用主との間で齟齬あるいは乖離が生じてしまう悲しい現象が起きている由。

米国労働省労働統計局の発表では、6月の消費者物価指数ならびに失業率はそれぞれ対前年比4.8%/3.6%と出され、第二四半期に入ってからも目立った動きはありません。しかしながら消費者物価指数も失業率も指標として重要ではあるものの、発表者側の思惑によって恣意的に数値を使い分けるため、先行きが読めない今の時代にあっては、これら以外に最新のニュースからも世の中の動きを絶えず知るようにするべきでしょう。

例えば、4月〜7月のレイオフ関連のニュースを取り上げますと、小売りではMcDonald’s、Walmart、Best Buy、Whole Foods、WalgreensやGapなどが、配車サービスでは言わずと知れたLyftやUberが、金融・税理ではErnst&YoungやDeloitte、Morgan Stanley、JPMorgan Chase、Wells Fargoなどが、ITではMicrosoftやLinkedIn、Oracle、Spotify、Metaなどが、エンターテイメントではDisneyやParamount、MTVが、製造では代表的なところでTyson Foodsや3Mなどが相次いで大規模人員整理を既に行ったか、近々行うと発表していますが、これらはあくまで一部に過ぎません。

ここに取り上げた企業は総じて「これから来るリセッションに備えて」を人員削減の主要理由に挙げています。しかし、今なお収益が高いところもかなりあり、在米日系企業に関わる皆さんも一段と厳しい展望にて趨勢を占う必要がありそうです。

ちなみに、同じく労働統計局の6月の発表によれば、今年3月調べの私企業が支払う労働者総報酬平均は$40.79/hour。そのうち金銭報酬部分が$28.76/hour(全体の70.5%)、福利厚生部分が$12.02/hour(29.5%)とのこと。2020年6月時の総報酬平均$35.96/hourと比較すれば、物価高や人件費上昇が経営のかじ取りを難しくさせているのがわかります。

尚、前記事の末尾にて、今回「従業員の解雇」を取り上げると予告しておりましたが前置きだけで紙面を埋めてしまいました。あしからず。次回に続きます。

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