企業概況ニュース 掲載 「人事・備忘録」 第十二回 『退職・転職トレンドの終焉 (続き2)』

「人事・備忘録」の今年1月号掲載記事は、暫く加熱していた昇給スピードが今後冷却段階へと移る筈との予想を述べて締めくくりましたが、これに絡んで労使いずれも興味をそそる記事を3月14日BLS(労働統計局)が「今年の昇給?…予想するより低いかもしれません」と題し給与調査企業の見解を引用して出しました。

 「企業は依然として従業員の給与額を大きく上げ続けており、調査対象企業の半数以上が3%以上の昇給を予定していると答えるも、但し5%を超える大幅な賃上げを行うと回答した企業はほとんどなく、これは今まで5%以上だった昇給平均が4%〜5%の範囲内にまで下がることを意味する」です。

 しかしながら概して米系企業は給料が高く、対する日系企業は長い年月をかけてある程度まで追いついてきたものの特定のポジションを除いて未だその水準にまで達していないことから、この鈍化してきた昇給速度あるいは昇給度合いの情報を鵜呑みにして倣うべきではありません。これは何も給与高の良し悪しを衝いているのではなく、給料値が低かろうとも現に今も多くの人達が日系企業で就労している事実から某か別の魅力があるにちがいなく、自社が他社と給与額で競えないと思うのであれば今ある誇れる部分を現従業員ならびに今から雇う者達に対する「売り込むべきポイント」として一層の磨きをかけるべきでしょう。

 それはさておき、昇給スピードが鈍化して来たことは、全米ジョブオープニング数が少しずつ減り、また大手企業群による大規模な人員削減策によって失業率が少しずつ上がり始めたこと、加えて米経済が景気後退局面に入るのを見据えて多くの企業たちが雇用すべきポジションとオファー給与額の再検討に入ったことから全てが抑制の方向に転じた結果に他なりません。

 加えて、消費者物価指数の方は、昨年の常時8%超え、中でも6月が9%超えだったことと比べるとまだ高くはありますが、12月が前年比6.5%、1月が6.4%、2月が6.0%と最近は落ち着いてきた感があり、暮らし向きを心配する人々および彼・彼女達の給料をどうしようかと気を揉んでいた企業をして少しは安堵したことでしょう。

 但し、天塩にかけて育てて来た(と思っている)筈の従業員が或る日突然辞めると言って来た時を想定し、その場にて彼、彼女達を如何に押し留めるかどうやって翻意させるかを、今から幾つもの対策を練って準備はしておくべき、延いては先手を打つべきではあります。

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