企業概況ニュース 掲載 「人事・備忘録」 第十三回 『退職・転職トレンドの終焉 (続き3)』

前回の「人事・備忘録」4月号掲載記事は、長い時間をかけて良好な関係を育んで来た筈の部下が、ある日突然辞めると言って来た時を想定し、対策を練り、準備も怠らず、また先手を打つべきと締めくくりました。さもないと貴重な人員が失われることになり、経営にまで打撃を与えることになりかねません。

米国労働省の一機関である労働統計局の発表では、1〜4月の消費者物価指数は対前年比でそれぞれ6.4%、6.0%、5.0%、4.9%と少しずつ抑制する方向に動いており、対する1〜4月の失業率の方は3.4%、3.6%、3.4%、3.4%と今年に入ってからも目立った変化はありません。一方で、全米ジョブオープニング数は1月以来少しずつ減って来ており、実際に雇用される者の数も(依然、多くはあるが)僅かに下がってきています。そんな中、IT業界では昨年来の大型人員削減の動きが止みそうになく、今年に入り実施された技術系就労者の解雇数は、現時点で昨年全ての技術系の解雇数を早くも上回り、更に5月時点で今後のレイオフ計画を公表する企業がまだまだ出て来る始末。(但し、毎月それらを少し上回る程度の雇用数があるため失業率に変化が現れにくい)

また最新の給与情報では、大方の調査にて雇用主のおよそ半数以上が「昇給率は3%を超えるだろう」と回答するものの、4%台には達せず、今年全体の平均昇給率は昨年より低くなる見通し。加えて5%以上の昇給を考えている企業は現時点でおおよそ10社に1社程度しかなく、時が経つに連れ、今年度の予測値が少しずつ下がって行く感がある。従ってこのまま進めば、たとえ昇給があったとしても多くの人の給与額は物価の上昇に追い付けそうにありません。

他方で、昨年を指す流行語「大退職時代」との言葉に不安を覚え、現社員の給料をかなり底上げした企業や、何をさておいても人員確保とばかり積極的に新規採用した企業の多くに早くも弊害が出始めています。

IT企業大手は、これまで潤沢な予算にて優秀な人材を先ず以て多めに採用し、後になって余剰とわかれば辞めて貰うことを繰り返す傾向にあったため、同業界のレイオフのニュースばかりが目立つ。このことを差し置いてみても、最近採用した従業員の職務遂行能力に疑問を感じ、辞めて貰おうと考える企業が多いようで、斯くいう弊社にも日系企業から解雇に絡んだ問合せが増えているのが実情です。

次回はその「従業員の解雇」に関する一切ならびに注意事項を扱いたく、予定します。

企業概況ニュース ページ