ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第35回 『米国世情と日系企業人事の隔たり(6)』

昨年末より当コラムでは、1963年に法制化されたThe Equal Pay Act(同一賃金法とも賃金平等法ともいう)を繰り返し取り上げてきました。同法を知ることこそが自社の人手不足を解く鍵となり且つまた最新の米国雇用事情を知るには避けて通れない課題だからです。そして同法は雇用全体の根幹と言って差し支えない重要事項であることからも今回は更に詳しく取り上げることとします。

当時は男女間での給与格差が著しかったため性差別行為を阻止するべく同法が成立した所以であるも、同法が半世紀前に施行されたにもかかわらず今に至ってなお解消されたとは言い難くそのうえ人種や年齢など別種の差別も絡んできていることから、最近はより一層問題視され始めたと言えるでしょう。

そこで雇用主側に対し、はっきり差別行為であることを理解せしめつつ尚且つ是正して貰うよう分かり易い戒め事として出てきたのが前々回=2月24日号掲載=と前回=3月23日号掲載=のコラムでも紹介した「Salary History Bans─雇用主が求職者の給与履歴を訊ねることを禁止する法律(の総称)」および、「Pay Transparency Act─募集するジョブポジションの給与額を前以って公表させる法律(の総称)」なのです。

これらが最近になってなぜ米国各地において施行され始めたのか? それは、今から雇おうとする求職者達のこれまでの給与額を知れば雇う側は当たり前のようにそれに少し上乗せしたオファー額を提示するでしょうし、そうなれば低額の者と高額を得ている者の間で給与額が益々開いていってしまうことになります。そこで出だしから給与格差が生まれるのを防ぐため雇用主側に対し、求職者に向けて得ている(いた)給与額を問うことを禁じ、更には募集中のジョブポジションの給与額(枠)を前以って公表させるようにも強いたのです。

では、「採用時の注意点はわかった。ならば採用した後はどうか?」と問われれば、同じ職務に就いても各人の職務遂行能力に差が生じることによって従業員達の給与額に開きが出てくることはどの企業にも起こり得ますが、冒頭で取り上げたThe Equal Pay Actでは、これまで同じ就労内容・同じスキルにて・同じ責任範囲であるポジションの従業員のみが賃金の不均等についてのクレームを行うことが可能でした。ところが連邦法のThe Equal Pay Actとは別にカリフォルニア州においてCalifornia Fair Pay Actという独自に進化してきた州法が改正されたことにより、2016年1月以降は、類似の雇用条件下で類似の就労内容であればクレームを行うことができるようになり、更に同法に基づくクレームに対して、雇用主は年功序列・メトリックシステムなど公式に定めた制度の下で各従業員の給与の調整を行っており、性別によって調整を行っていないことを証明する必要が生じたのでした。次回に続く。

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