ニューヨーク Biz! 掲載「HR人事マネジメント Q&A」 第32回 『米国世情と日系企業人事の隔たり(3)』

昨年最後の掲載回となる筈であった12月16日号コラムですが、土壇場で出せず終いになりました。というのも私が常時携行するPCに不具合が起きたためで、書きかけのこのコラム原稿も他の作業中のものも全てが回復不可能となり、「なんてことだ」と嘆くと同時にこのデジタル時代にあって論語「民はこれに由らしむべし」でいうところの私は「IT技術を黙々と使わされ続ける側の市井の者」だと完全に理解もさせられました。とにかく不束であったことをここにお詫びする次第です。

さて、前々回=11月25日号掲載=では「皆さんから見てそれほどの働きをしていない思われる人たちの給与や報酬までもが~中略~上がって行っている」こと、対する「働かざる者食うべからず」と聞かされて育った我々のメンタリティーでは今の事態を容易く承服できないだろうことを以って記事を締めくくりました。

ここ数年に亘り大抵の職の賃金が急激に上がったのは、パンデミックや戦争による供給不足や物流停滞、そこから物価が押し上げられ、コロナ禍で外出することを不安視した人々が生活重視に回帰し大量退職へと至ったこと、或いは1963年にできた連邦法The Equal Pay Actの強化とそれによる人々の意識の変化など複合要因が連鎖し、バタフライ効果の如く人手不足を招くことなったのが理由だと考えます。

但し、世の中の状況が再び別方向に転じているきらいがあります。たとえば昨年10月時にエレクトリカル(電気系)エンジニアの平均給与額だけが全米中で一斉に下がりました。つい最近まで給与額も高ければ人気も高く新卒者の初任給でさえ6桁の額に達するまでになっていたのが何らかの作用が働きブレーキがかかったようです。要は上がり過ぎた給与額に揺り戻しが起きたものと思われます。

それに、EV(電気自動車)への乗り換え需要が高まってきていたのが一段落した…というより人気に陰りが生じた…こともご承知の通りで、レンタカー会社大手ハーツがEVの維持費や修理代に高額の経費が嵩むことから2万台を売却するとのニュースが出たかと思えば、大寒波の襲う中西部一帯でEV充電ステーションで動けなくなった多くの車が映し出され、自動車オーナーたちの「EVに失望寸前」との声が紹介されたとか。それにビッグ3がEV製造工場建設計画の延期を発表したことで各業種の雇用面に影響を及ぼすことも必定でしょう。

あとは本丸の雇用分野についても、最新の統計では昨年より解雇件数が低かったことから1月8日の週の失業保険申請件数が2022年9月以来の低水準となり、これは雇用主たちが新規採用を見合わせてはいるものの現従業員を解雇していない証左であるとか。

以上、前コラムの続きを予定しながらも24年を迎え、新年のご挨拶代わりに最新の動向を知って頂くこととし、今回はこれにて失礼します。